高次脳機能障害

DISEASE

概要

OVERVIEW

高次脳機能障害は、脳の前頭葉や頭頂葉に障害が生じることによって引き起こされる症状の総称です。高次脳機能障害は、思考、判断、問題解決、情報処理、記憶、言語能力、注意力、抽象的思考、計画立案などの高度な認知機能に影響を及ぼすことがあります。

一部の人々によって、高次脳機能障害は「せん妄」と混同されたり、「認知症」と誤解されることがあります。しかし、これらは異なる状態です。

せん妄(Delirium)は急速な意識の混乱状態を特徴とし、短期間で発症します。せん妄は一般的に全身の病状や薬物の副作用などによって引き起こされ、症状が改善される場合があります。一方、高次脳機能障害は脳の特定の領域の障害によるものであり、持続的な症状がみられることがあります。

また、認知症(Dementia)は慢性的な脳の障害によって引き起こされる状態であり、高次脳機能の低下が主な特徴です。認知症は日常生活における機能の低下や行動の変化などを引き起こし、進行性の特徴があります。

高次脳機能障害は、特定の脳の領域への障害によって引き起こされる認知機能の低下を指すため、せん妄や認知症とは異なる病態です。これらの用語の正しい理解と区別が重要であり、医療専門家の評価によって正確な診断が行われるべきです。

原因

CAUSE

高次脳機能障害の主な原因は、脳の損傷や疾患です。以下に、高次脳機能障害の一般的な原因を4つ紹介します。

外傷性脳損傷
脳外傷や脳卒中などによる脳の損傷が高次脳機能障害を引き起こすことがあります。例えば、前頭葉の損傷は、判断力や計画立案能力に影響を与えることがあります。

神経変性疾患
アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患は、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。これらの疾患は、神経細胞の異常な変化によって脳機能が低下するため、認知機能にも影響を及ぼします。

脳腫瘍
脳内にできる腫瘍は、周囲の正常な脳組織を圧迫し、高次脳機能障害を引き起こす可能性があります。

脳血管障害
脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害は、脳への血液供給が減少または遮断されることで高次脳機能障害を引き起こすことがあります。

(前兆)症状

SYMPTOMS

高次脳機能障害の症状は、患者様の個別の状態や原因によって異なります。以下に一般的な症状とその特徴を紹介します。

認知機能の低下
認知機能の低下は、記憶力や情報処理能力の低下などを伴います。患者様は日常生活での情報の取得や保持、処理に困難を抱えることがあります。例えば、新しい情報を覚えるのが難しくなったり、複数の情報を同時に処理するのが困難になったりします。

判断力や問題解決能力の低下
高次脳機能障害では、複雑な問題に対して適切な判断や解決策を見出すことが難しくなります。患者様は物事を総合的に考える能力や適切な選択を行う能力が低下します。例えば、日常生活での意思決定や計画の立案に困難を抱えることがあります。

言語障害
高次脳機能障害では、言葉の理解や表現に困難を抱えることがあります。患者様は他人の言葉の意味を正確に理解するのが難しくなったり、自分の思考や意見を適切に表現するのが困難になったりします。また、文章の作成や話し言葉の流暢さにも問題が生じることがあります。

抽象的思考の困難
抽象的な概念や比喩、メタファーなどの理解が困難になります。具体的で直感的な情報には対応できるものの、抽象的な概念を理解するのが難しくなる傾向があります。例えば、具体的な物体や事象に対しては適切な反応を示すことができるが、抽象的な言葉やアイデアに対しては理解が十分でない場合があります。

注意力の低下
高次脳機能障害では、集中力や注意の切り替えが難しくなります。患者様は外部の刺激に敏感に反応したり、長時間の注意を維持することが難しくなったりします。これによって、作業の効率性や日常生活でのタスク遂行に困難を抱えることがあります。

これらの症状は、高次脳機能障害の初期段階や軽度の状態に現れることがあります。しかしながら、個々の症状の程度や出現頻度は患者様によって異なるため、医療専門家の評価が必要です。早期の識別と適切な介入は、患者様の機能維持や生活の質を改善する上で重要です。

検査/治療

TREATMENT

検査

高次脳機能障害の検査方法は、主に神経心理学的な評価や脳画像検査などが用いられます。神経心理学的な評価では、注意力、記憶、言語能力、問題解決能力などの認知機能を評価するための検査が行われます。これにより、患者様の認知機能の特定の弱点や障害の範囲を明らかにすることが可能です。

評価尺度の使用
医療専門家は、特定の評価尺度やテストを使用して患者様の認知機能や言語能力、問題解決能力、注意力などを評価します。これにより、障害の程度や範囲を把握し、適切な治療計画を立案するための基準となります。

神経心理学的テスト
神経心理学的テストは、認知機能の特定の側面を評価するために使用されます。例えば、記憶力、言語理解、注意力などの領域をテストすることができます。これにより、障害の特定のパターンや強さを明らかにし、個々の機能に合わせた治療計画を立案するのに役立ちます。

脳画像検査
病院では脳の構造や機能を評価するために、MRI(磁気共鳴画像法)やCT(コンピュータ断層撮影)などの画像診断法が使用されることがあります。これにより、脳の異常や障害箇所の特定が可能となり、治療の方針を立てる上で重要な情報となります。

治療

治療方法は、個別の症状や患者様の状態に応じて適切なアプローチが選択されます。一般的には、以下のようなアプローチが用いられます。

リハビリテーションプログラム
専門のリハビリテーションチームによる個別のプログラムが作成されます。認知リハビリテーションや作業療法、言語療法などが行われ、患者様の認知機能の改善や日常生活への適応を支援します。

薬物療法
神経変性疾患などに伴う高次脳機能障害の場合、病院では薬物療法が行われることがあります。特定の症状や疾患に対して効果のある薬物が処方されることがありますが、個別の状態に応じて判断されます。

サポートと教育
患者様やその家族に対して、高次脳機能障害の理解や日常生活への適応のサポートが行われます。情報提供やカウンセリング、支援グループへの参加などが含まれます。

当リハビリセンターのリハビリ

REHABILITATION

一般的なリハビリ

高次脳機能障害のリハビリテーションは、患者様の症状やニーズに基づいて個別に計画されます。以下に一般的なリハビリ方法をいくつか紹介します。

認知リハビリテーション
認知機能の改善を目指すために、様々な認知トレーニングが行われます。例えば、記憶のトレーニングや問題解決の練習、注意力の向上などが含まれます。

作業療法
日常生活で必要な活動に対する適応能力を向上させるために、日常生活動作のトレーニングや補助具の使用、環境の適応などが行われます。

言語療法
言語障害のある患者様に対しては、コミュニケーション能力の向上や言語理解のトレーニングが行われます。具体的な方法としては、言葉の認識や表現の練習、コミュニケーションストラテジーの学習などがあります。

ソーシャルスキルトレーニング
行動制御や社会的なスキルの向上を目指すために、ソーシャルスキルトレーニングが行われることがあります。例えば、コミュニケーションスキルのトレーニングや社会的なルールやマナーの学習などが含まれます。

これらのリハビリテーション方法は、病院や専門家の監督・指導のもとで行われるべきです。また、患者様やその家族の協力とサポートが重要な役割を果たします。

当リハビリセンターのリハビリ

当リハビリセンターは、病院と遜色のないリハビリが提供できるよう、脳卒中に特化した専門知識を持った経験豊富なセラピストと最新の機器を兼ね備えた施設となっております。リハビリの内容としては、運動麻痺の改善を目的とした手のリハビリや、歩行を始めとした基本動作など、お客様のニーズに応えられるようになっております。
主な流れは、以下のとおりです。

  • 体験時にカウンセリング、全体の評価及びリハビリ
  • 体験後、問題点や課題を把握
  • 機能改善・目標達成までのプランを立案
  • お客様のニーズに合わせたリハビリを実施
  • 再評価・目標の達成度の確認
  • 目標達成

また当リハビリセンターは、一般的なリハビリ施設との大きな違いが2つあります。

(1)お客様のニーズを優先
後遺症で、日常生活は送れても「出勤が大変」「家事ができない」「趣味を再開したい」「子育てにまた参加したい」など、退院した後で「もっとリハビリをやっていれば良かった・・・」と思う方が多いかと思います。
同じ脳卒中という病気や後遺症でも、人によって悩みは千差万別です。お客様が持っている「悩み」や「もう一度やりたい事」があれば、是非ご相談ください。私たちは、お客様のニーズ・希望に沿って、リハビリ計画・目標の立案を実施し、寄り添いながらリハビリを行っていきます。

(2)セラピストと最新のテクノロジーの融合
また当リハビリセンターでは、最新のテクノロジーを使用したリハビリにも力を入れております。身体を動かすには、お客様ご自身の意思が必要不可欠となります。セラピストがただ他動的に動かすよりも、「イメージした動作」と「実際の動作がリンク」することによって脳は活発になります。このことを繰り返し、「できた!」と言う感覚を増やし、モチベーションを上げることが脳卒中の後遺症に対するリハビリの基礎となります。
それを実現するテクノロジーとして、当リハビリセンターでは筑波大学が開発したロボットスーツ HAL®(Hybrid Assistive Limb®)や信州大学が開発した歩行支援ロボットcurara®を活用してリハビリを実施していきます。これらのロボットは、実際に脳卒中をはじめとした、脳・神経に関する疾患を患った方に対して、改善が見られた実績のあるリハビリロボットになります。

このようにセラピストの専門的な知識と経験、テクノロジーでお客様の秘めている能力を引き出す事で後遺症の改善を目指していきます。改善した後は、そこから動作に繋げ、生活に繋げ、暮らしに繋げると言う順序で脳卒中に対するリハビリを行います。

最後に

このようにセラピストとリハビリロボットを組み合わせ成功体験を増やしていくのが、当リハビリセンターの特徴となっております。成功体験が増えると「また挑戦してみよう」「どうやって動かそう、こうすると動きやすいくなるのでは?」と考えるきっかけになります。考えることは脳を刺激しますので、新たに神経の回路を構築し機能の改善につながります。適切な難易度を設定していき、段階を踏みながら目標を達成していけるリハビリを行います。
些細な事でも大丈夫です。高次脳機能障害の後遺症で困っている事がありましたら、是非ご相談ください。私たちはいつでもお待ちしております。

この記事を書いた人

大野 真之介

大野 真之介

理学療法士 / 認定理学療法士(脳卒中)

2016年に理学療法士免許を取得。同年より愛知県内の大学病院で勤務し、回復期・急性期・外来のリハビリを経験。急性期ではSCU(脳卒中集中治療室)の専任理学療法士としても勤務。
これまで主に脳血管疾患・脊髄損傷・神経難病の方のリハビリに携わる。2020年に日本理学療法士協会の認定資格である認定理学療法士(脳卒中)を取得。2022年11月から脳神経リハビリセンター名古屋に勤務。
私は常に「一緒に進めるリハビリ」を心がけています。療法士がリハビリをするのではなく、お客様にも“動き方”や“変化”を知ってもらいながら、運動を通して目標達成を目指しています。目標に向けて一緒に挑戦していきましょう。全力でサポートします。