筋ジストロフィー

DISEASE

概要

OVERVIEW

「筋ジストロフィー」とは、再生が難しい筋肉の破壊により日常生活が大きく障害される病気です。遺伝性の病気であって、詳しいメカニズムは分かっていません。
筋ジストロフィーという名称は総称であり、遺伝形式(遺伝子の伝わり方)や症状などにより、以下のように複数のタイプに分類されます。

  • デュシェンヌ型筋ジストロフィー
  • ベッカー型筋ジストロフィー
  • 肢帯型筋ジストロフィー
  • 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
  • 先天性筋ジストロフィー

上記の他にも類型が存在し、代表的なものが「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」です。
タイプによって症状の見られ方は様々ですが、いずれも筋肉の破壊による筋力低下、運動機能の障害が見られます。
また、病理学において「筋原性筋萎縮 (ミオパチー)」というカテゴリーに分類される病気であり、病変は筋肉の変性(異常な変化)が中心です。

筋ジストロフィーと同じく、著しい筋力低下を示す病気として「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」がありますが、病態が異なります。ALSで障害されるのは筋肉でなく、筋肉を動かす神経です。筋ジストロフィーとALSは、いずれも難病指定されており、筋肉が著しくやせてしまう病気ですが、異なる病気であることを理解しておきましょう。

原因

CAUSE

筋ジストロフィーの原因は、遺伝子の変異が発生することだと分かっています。

遺伝形式にはいくつかのタイプがありますが、筋ジストロフィーで主要となるのが以下の3つの形式です(※1)。

  • X染色体連鎖
  • 常染色体優性遺伝形式
  • 常染色体劣性遺伝形式

X染色体連鎖とは、性別によって発症の確率が異なるものを言います。女性の場合はキャリア(注1)となる可能性があり、必ずしも発症するわけではありません。一方、男性では50%の割合で発症します。
常染色体優性遺伝形式は性別によりません。父母のどちらかが変異遺伝子をもっていれば、子どもに伝わる確率は50%となります。これらに対し、常染色体劣性遺伝形式の場合、発症する確率は25%です。ただし、近親婚であれば確率はさらに上がります。

[注1 「キャリア」:ある病気の原因となる異常遺伝子をもっているものの、その病気の症状が現れておらず、その病気を示す証拠が認められない人のこと。(※2)]

上記のとおり、筋ジストロフィーは遺伝子の変異と変異遺伝子の伝播が原因です。しかし、なぜ遺伝子の変異が起こるのかはわかっていません。

遺伝子の変異により、「筋肉を構成するタンパク質の生成や合成ができない」、「筋肉の正常な機能が破綻する」など、さまざまな説があげられています。ただし、いずれも有力な説には至っていません。原因の詳しい解明については、将来的な課題として残されています。

※1 出典:難病情報センター「筋ジストロフィー(指定難病113)」

※2 引用:MSDマニュアル家庭版 遺伝子スクリーニング)

(前兆)症状

SYMPTOMS

筋ジストロフィーの症状として、主要なものは運動の障害です。
たとえば立ち座り困難、歩行時の動揺、階段の上り下りが難しいなどの症状が見られます。幼少期の発症では、「転びやすい」「走れない」といった症状が病気の発見につながる場合も少なくありません。

また、運動機能の障害以外でも、呼吸や飲み込み、発声、眼球運動などが障害される場合もあります。
さらに、合併症にも注意が必要です。筋ジストロフィーでは、筋肉の破綻に付随して生じる以下の二次的障害に配慮しなければいけません。

  • 関節の変形
  • 姿勢異常
  • 粗鬆症
  • 歯列不正
  • 誤嚥・栄養障害等
  • 心機能低下
  • 消化器障害
  • 難聴
  • 知的障害・発達障害
  • けいれん
  • 白内障・網膜症

上記は必ずしも合併するわけではありませんが、その後の生活に大きな影響がでるため十分な管理が必要です。骨関節の変形や不良姿勢は、日常生活の大きな支障となります。また、呼吸・心機能の低下は命にも関わる重篤な合併症です。

ここで、筋ジストロフィーの症状については、発症パターンも進行度合いが多様である点を強調しておきます。
筋ジストロフィーと診断されたからといって、必ずしも同じように病気が進展するわけではありません。筋力低下の程度も異なります。
また、筋ジストロフィーでは、運動症状に先立って合併症が見られる場合もあります。筋ジストロフィーの病状は、あたかも個人の個性であるかのように多様です。

検査/治療

TREATMENT

検査

筋ジストロフィーでは、以下の検査が実施されます。

  • 血液検査
  • 筋電図
  • 筋生検
  • 遺伝子解析
  • ジストロフィンテスト

上記のうち、「血液検査」「筋電図」「筋生検」は筋肉の状態(破壊・変性の程度)を調べるのに有効です。
また、遺伝性疾患であることから、「遺伝子解析」や「ジストロフィン検査」が実施されます。両者はいずれも遺伝子の変異を調べる検査です。

治療

筋ジストロフィーには確立した治療法がありません。個々の症状に応じた対症療法が治療の中心です。
治療は主に「薬物療法」「リハビリテーション」「手術」の3つがあり、さらに合併症などの管理・ケアを含みます。

薬物療法で用いられるのはステロイドです。ステロイドには筋力維持の効果が期待されています。
運動療法(リハビリテーション)も重要な治療であり、残存する筋肉の活用や関節の変形などを予防します。呼吸・心機能を維持し、合併症を予防する意味でも運動療法が有効です。さらに、車椅子などの補助具・装具を使用し、生活圏を拡大とQOLの向上を図ります。

手術が実施されるのは、関節・姿勢の変形が著しい場合です。筋ジストロフィーでは、背骨が横方向にねじれる「側湾症(そくわんしょう)」、関節が固まる「拘縮(こうしゅく)」に対して、外科的な矯正が望まれるケースのみ実施されます。

当リハビリセンターのリハビリ

REHABILITATION

一般的なリハビリ

筋ジストロフィーは筋力が徐々に低下していきます。また型によって実施されるリハビリに多少違いはありますが、基本的には進行度に合わせて計画が立てられます。リハビリを行う意義としては「生命予後の改善とお客様の生活を支える」事が重要となっていきます。ただ筋力が低下するだけではなく、以下のような問題が生じます。

  • 不良な姿勢
  • 体力の低下
  • 心身の疲弊
  • 関節の変形
  • バランス能力の低下
  • 呼吸困難
  • 生活範囲の制限等

それぞれの問題点に対して、適切なリハビリを受けることによって、新たな怪我の予防や生活への適応が可能となります。筋ジストロフィー発症後は、特に転倒リスクが高まります。転倒によって生じる外傷や心理的なストレスによって、活動範囲を狭めてしまう方が多くいらっしゃいます。
筋力に関する訓練だけではなく、予防方法や負担のない動作の獲得や装具に関する相談も実施します。

当リハビリセンターのリハビリ

当リハビリセンターは、病院と遜色のないリハビリが提供出来るよう、専門知識と最新の機器を兼ね備えた施設となっております。
主な流れは、以下のとおりです。

  • 体験時にカウンセリング、全体の評価及びリハビリ
  • 体験後、問題点や課題を把握
  • 機能改善・目標達成までのプランを立案
  • お客様のニーズに合わせたリハビリを実施
  • 再評価・目標の達成度の確認
  • 目標達成

また当リハビリセンターは、一般的なリハビリ施設との大きな違いが2つあります。

(1)お客様のニーズを優先
お客様の身体能力、環境、進行度に合わせ総合的に考えたリハビリを実施していきます。また、今後予想される変化や身体状況の対策・予防方法についても随時対応させて頂きます。また弊社は福祉用具事業も展開しており、症状や生活に考慮した、福祉用具の相談も随時対応させて頂きます。お客様が持っている「悩み」や「またやりたい事」があれば是非ご相談ください。私たちはお客様が求めているニーズ・希望に沿ってリハビリ計画と目標の立案を実施し、お客様に寄り添ってリハビリの対応を行っていきます。

(2)セラピストと最新のテクノロジーの融合
また当リハビリセンターでは、最新のテクノロジーを使用したリハビリにも力を入れております。身体を動かすには、お客様ご自身の意思が必要不可欠となります。セラピストがただ意図的に動かすよりも、「イメージした動作」と「実際の動作がリンク」することで神経・筋は活発になります。このことを繰り返し、「できた!」と言う感覚を増やし、モチベーションを上げることが筋ジストロフィーのリハビリの基礎となります。
筋ジストロフィーに関しても、HAL®を始めとしたロボットによるリハビリは即自効果、歩行能力の改善など多く報告されております。
それを実現するテクノロジーとして、当リハビリセンターでは、筑波大学が開発したロボットスーツ HAL®(Hybrid Assistive Limb®)や信州大学が開発した歩行支援ロボットcurara®を活用してリハビリを実施していきます。これらのロボットは、実際に筋ジストロフィーを始めとした、難病に対して、改善が見られた実績のあるリハビリロボットになります。
このようにセラピストの専門的な知識と経験、テクノロジーによるお客様の秘めている能力を引き出す事で動作の改善を目指していきます。改善した後は、そこから動作に繋げ、生活に繋げ、暮らしに繋げると言う順序でに対するリハビリを行います。

最後に

筋ジストロフィーは進行性の疾患です。しかし、リハビリを導入することによって、その進行を遅らせることが可能となります。当リハビリセンターでは、リハビリロボットによる動作練習とセラピストによる、専門的な知見を掛け合わせ、お客様の能力に合わせた適切なリハビリを提供していきます。また身体状況に応じた難易度を設定していき、段階を踏みながら目標を達成していけるリハビリを行います。
些細な事でも大丈夫です。困っている事がありましたら、是非ご相談ください。私たちはいつでもお待ちしております。

この記事を書いた人

大野 真之介

大野 真之介

理学療法士 / 認定理学療法士(脳卒中)

2016年に理学療法士免許を取得。同年より愛知県内の大学病院で勤務し、回復期・急性期・外来のリハビリを経験。急性期ではSCU(脳卒中集中治療室)の専任理学療法士としても勤務。
これまで主に脳血管疾患・脊髄損傷・神経難病の方のリハビリに携わる。2020年に日本理学療法士協会の認定資格である認定理学療法士(脳卒中)を取得。2022年11月から脳神経リハビリセンター名古屋に勤務。
私は常に「一緒に進めるリハビリ」を心がけています。療法士がリハビリをするのではなく、お客様にも“動き方”や“変化”を知ってもらいながら、運動を通して目標達成を目指しています。目標に向けて一緒に挑戦していきましょう。全力でサポートします。