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高齢者のための脊柱管狭窄症ストレッチガイド【歩行改善・痛み軽減】

こんにちは!大阪府大阪市にある脳神経リハビリセンター大阪で理学療法士をしている岡です。理学療法士のキャリアは14年になります。

歩くと痛い、前かがみで楽になる…その辛さ、私も多くの患者様から聞いてきました。

その状況を放置すると歩ける距離が徐々に短くなってしまう恐れがあります。

この記事では高齢者でも安全にできるストレッチと生活のコツを、わかりやすく解説します。

正しく行えば痛みの軽減や歩行距離の改善が期待できます。

是非ご一読ください。

脊柱管狭窄症とは?

脊柱管狭窄症とは?

脊柱管狭窄症とは、背骨(脊椎)の内部には、脳から続く脊髄神経が通る「脊柱管」というトンネル状の空間があります。

この脊柱管が狭くなることで神経が圧迫され、痛みやしびれを引き起こす病気です。

この章では、脊柱管が狭くなる仕組みと部位ごとの特徴、代表的な症状の理由について解説します。

脊柱管が狭くなる「仕組み」

前述の通り、脊柱管とは、脊椎の中央を縦に通る神経のトンネルです。

ここを通る神経は脳から続いていて、脊髄神経と言います。

加齢や生活習慣の影響により、以下のような構造的な変化が起こります。

  • 椎間板(ついかんばん):背骨のクッション  
    加齢により弾力を失い、潰れることで神経を圧迫します。
  • 椎間関節(ついかんかんせつ):背骨同士のつなぎ目
    変形や炎症によって骨の棘(骨棘)が生じ、神経の通り道を狭めたり、神経を刺激します。
  • 黄色靭帯(おうしょくじんたい):脊柱管の後方を覆う靭帯  
    加齢や姿勢の影響で厚くなり、脊柱管を圧迫します。

このような変化が重なることで脊柱管を通る脊髄神経の圧迫が進行し、痛みやしびれが現れます。

特に立位や歩行時に悪化し、前かがみで楽になることが特徴です。

腰部・頚部・胸部で異なる原因と症状の特徴

脊柱管狭窄症は部位により原因と症状が異なります。

どの部分で神経が圧迫されるかによって、出る症状が変わるため注意が必要です。

  • 頚部脊柱管狭窄症:腕や手のしびれや脱力感が生じ、箸が使いにくいなどの細かな動作障害がみられます。
  • 胸部脊柱管狭窄症:まれですが、歩行中に両足が重く感じたり、体幹のバランスが崩れやすくなります。
  • 腰部脊柱管狭窄症:お尻や脚にしびれ・痛みが出て、長く歩けない「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が代表的です。

姿勢や体位によって脊柱管の広さは変化し、前かがみ姿勢で症状が軽減する理由もここにあります。

これを「体位依存性の狭窄」と呼び、診断の重要な手がかりになります。

間欠性跛行が起こる理由

間欠性跛行とは、歩行を続けると脚がしびれたり痛くなり、少し休むと再び歩けるようになる症状です。

これは、歩行によって脊柱管内の神経が圧迫され、血流が一時的に低下するために起こります。

神経は酸素や栄養が不足すると痛み信号を発しやすくなり、特に腰部や下肢の神経症状が出やすいです。

しかし、前かがみ姿勢を取ることで脊柱管が広がり、神経への圧迫が軽減され、症状が和らぎます。

これが「休むと楽になる」理由です。

ただし、放置すると神経障害が進行し、安静時にも痛みが出ることがあります。

そのため、早期に医療機関で画像診断を受け、症状の原因を正確に把握することが重要です。

頚部・胸部・腰部いずれの狭窄も、放置すれば歩行障害や手足の麻痺に進行するおそれがあります。

排尿障害や下肢の麻痺がある場合は手術が必要ですが、多くの患者様は保存療法(運動・姿勢・温熱)で改善が期待できます。

改善が期待できる理由とは?

脊柱管そのものを広げることは難しいものの、筋肉・血流・神経の働きを整えることで症状を緩和することは十分可能です。

リハビリセラピストが行うアプローチでは、筋の緊張を緩め、関節の動きを整え、痛みの原因となる神経圧迫を間接的に軽減します。

特に、腰部周囲の筋肉(体幹・殿筋・股関節)を柔らかく保ち、神経への負担を減らすことが、症状を改善する鍵です。

また、姿勢や歩行の癖を修正することで、再発を防ぎながら機能を取り戻すことができます。

このように、正しいリハビリを継続すれば、「治らない」と感じていた痛みも、少しずつ軽減し、再び快適な生活へと近づけます。

  • 脊柱管狭窄症は神経圧迫による慢性疾患ですが、機能改善は可能です。
  • 腰部・頸部・胸部で症状が異なり、生活動作に影響を与えます。
  • リハビリで、痛みやしびれを軽減し再発を予防できます。

高齢者でも安全にできるストレッチ

高齢者でも安全にできるストレッチ

この章では、高齢者の患者様でも安心して行えるストレッチを詳しくご紹介します。

脊柱管狭窄症の症状は、神経が圧迫されることで痛みやしびれが生じるため、無理な動きや急な身体を反らす動作、固い身体を無理に伸ばす動作を避けることが重要です。

ここで紹介するストレッチは、痛みが出にくく安全性が高い方法であり、継続することで歩行のしやすさや疲労感の軽減が期待できます。

① 前かがみストレッチ(最も基本)

椅子に座り、胸を太ももに近づけるようにゆっくり前かがみになる方法です。

脊柱管の中の神経の圧迫が減りやすく、歩行時に痛みが強くなる患者様に有効です。

力まず自然に息を吐きながら行うと、より筋肉の緊張がほぐれます。

② 膝抱えストレッチ(仰向けで安全)

仰向けで片膝を胸に寄せ、腰周囲の筋肉を緩める方法です。

床が硬い場合はベッドでも行え、安心して取り組めます。

ゆっくり抱えた後、呼吸を止めず20秒程度保つことで効果が高まります。

③ 四つ這い・背中丸めストレッチ(キャットポーズ応用)

両手両膝を床につき、背中を丸めたり少し戻したりする動きで脊柱の柔軟性を促します

前後左右のバランスを取りやすく、転倒の不安が少ない安心できる姿勢です。

無理な範囲で伸ばさず、心地よい範囲で繰り返します。

④ お尻(梨状筋・大殿筋)ストレッチ

椅子に座り、脚をもう一方の膝に乗せて軽く身体を前へ倒すことで、お尻の奥の筋肉が伸びます。

お尻の筋肉は神経の走行と関連が深く、柔らかくすることで症状が改善しやすくなります。

⑤ ふくらはぎ・太もも裏(ハムストリングス)ストレッチ

片脚を前に伸ばしつま先を上げることで下肢後面が伸び、歩行時の負担が少なくなります

背中を反らさず胸から前に倒す意識で行うのがポイントです。

どのストレッチも、痛みが出る場合はすぐに中止し、心地良い範囲で行うことがとても大切です。

症状別のストレッチ選択と使い分け

症状別のストレッチ選択と使い分け

この章では、脊柱管狭窄症の患者様がそれぞれの症状に合わせて適切なストレッチを選択できるように、具体的な使い分けの方法をご説明いたします。

痛みの出るタイミングや状況は人によって異なるため、「今の自分に必要なストレッチはどれか」を理解することが改善への近道です。

歩くと痛い場合(間欠性跛行タイプ)

歩行時に痛みが強く出る方には、前かがみ姿勢で神経の圧迫を軽減する方法が適しています。

特に、前かがみストレッチと膝抱えストレッチの組み合わせが効果的です。

身体の前屈を保持することで脊柱管が広がりやすく、しびれも軽減しやすくなります。

立ち続けると痛い場合

長時間の立位で痛みが生じる場合には、四つ這いでの背中丸めストレッチが有効です。

四つ這いの姿勢は腰に負担が少なく、痛みが出にくい範囲で安全に行えます。

座っていると痛い場合

座位でのお尻の痛みやしびれがある場合には、梨状筋および大殿筋に対するストレッチをおすすめします。

これらの筋肉は坐骨神経との関連が強く、筋肉が固くなると痛みが強くなりやすいためです。

朝起きた時がつらい場合

起床時の動作が痛い方には、膝抱えストレッチをベッドで行う習慣が役立ちます

起き上がる前に膝抱えを行うことで、腰への負担を減らし、動き出しがスムーズになります。

寝返りがつらい場合

寝返り動作で痛みがある場合には、太もも裏とふくらはぎのストレッチで下肢の柔軟性を高めます。

下肢の緊張が和らぐことで骨盤が動きやすくなり、寝返りも負担なく行えます。

無理に全てのストレッチを行う必要はなく、症状に合わせて優先順位をつけて行うことが重要です。

やってはいけないストレッチ・悪化につながる動き

やってはいけないストレッチ・悪化につながる動き

この章では、高齢者の脊柱管狭窄症で特に避けるべき動作と、その理由を具体的に説明します。

痛みを和らげるためにストレッチを行っているのに、逆に悪化することがあります。

その多くは「動きの方向」と「負荷」の間違いによって起こります。

反るストレッチ・強い体幹伸展

腰を反らせるストレッチは脊柱管が狭くなりやすく、痛みやしびれを強くする可能性があります。

例えば、腰を後ろに反る運動や後屈動作は控えた方が安全です。

もし伸展方向の運動をする場合には、痛みが出ない範囲で最小限の範囲に留める方法を推奨します。

痛みを我慢する・反動をつける

ストレッチ中に痛みを我慢すると筋肉が防御的に緊張し、逆効果になります。

また反動や勢いをつける動きは筋・靭帯に急な負荷がかかり危険です。

そのため、ストレッチはゆっくりとした動きと呼吸を合わせて行うことが重要です。

床での不安定な姿勢でのストレッチ

布団や柔らかいマットの上で行うストレッチは身体を安定させにくく、転倒リスクがあります。

可能であれば、椅子やベッド上などの安定した場所で行うことで、安全性が向上します。

長時間同一姿勢(座りっぱなし・立ちっぱなし)

長時間同じ姿勢でいることは血流を悪くし、痛みやしびれの増悪につながります。

30〜40分ごとに軽い体位変換や姿勢リセットを挟むことをおすすめします。

痛みや違和感がある場合は無理に続けず、その場で中止し、身体に合った安全な方法に切り替えることが重要です。

↓↓↓やってはいけないストレッチについては、こちらの記事をご覧ください。
脊柱管狭窄症で「やってはいけないストレッチ」【安全な動きを解説】

ご自宅での過ごし方と生活動作の工夫

ご自宅での過ごし方と生活動作の工夫

この章では、ご自宅での姿勢や日常動作を少し工夫することで痛みを軽減し、脊柱管への負荷を減らす方法をご説明いたします。

ストレッチだけでは改善しきれない痛みも、生活の中での身体の使い方を整えることで緩和されることがあります。

日常動作の注意点を理解し、身体にやさしい姿勢を習慣化することが歩行改善につながります。

立ち上がり方・起き上がり方

椅子から立ち上がる際は、前かがみ姿勢で荷重を前方に移動しながら立ち上がると腰への圧迫が減りやすいです。

また、ベッドから起き上がる場合は横向きになり、肘で身体を支えながら起きる方法を推奨します。

日常動作での前かがみ姿勢の活用

脊柱管狭窄症の場合、背中をまっすぐ伸ばすより、軽く前屈した姿勢の方が神経圧迫が軽減しやすいことがあります。

料理や洗面などの場面で背中を軽く丸める意識を持つと痛みが出にくくなります。

買い物カート・杖の使い方

買い物カートを押して歩ける方が多い理由は、自然に前かがみ姿勢が取れているためです。

杖を使用する場合は痛み側と反対側の手で持つ方法が安定性を高めます。

痛みが出た時の休み方

痛みを感じた際は、座ったまま軽く前屈するか、膝抱えに近い姿勢で休む方法が有効です。

短時間の休息を数回挟むほうが長時間同一姿勢で休むより回復しやすいです。

どの程度で医療機関や専門家に相談すべきか

痛みやしびれが2週間以上改善しない場合、または痛みが増悪傾向にある場合には専門家への相談をおすすめします。

患者様ご自身だけで判断しにくい場合も、早めの相談によって適切な方向性が見えることが多くあります。

ストレッチと生活動作の両方を適切に調整することで、痛みの軽減と歩行能力の改善が期待できます。

脳神経リハビリセンターの患者様の改善事例をご紹介します。

【発症30年】80代女性・YM様・慢性腰痛・両膝関節痛(術後)・右肩関節痛の改善事例

慢性的な腰痛と右肩関節痛、膝関節手術後からの膝の曲がりにくさ、両足のむくみの改善を希望。

屋外での歩行や日常生活動作にも不安があり、ご家族の紹介で当施設をご利用いただきました。

腰痛、両足のむくみ、右肩関節痛が軽減しました。

姿勢も良くなり、杖なし歩行もふらつきが少なくなり日常生活の不安が軽減しました。

また、両膝の動きが改善されたことで今までできなかった床からの立ち上がり動作が支持物を使用して可能になりました。

 ↓↓↓詳しくは、こちらをご覧ください。
【発症30年】80代女性・YM様・慢性腰痛・両膝関節痛(術後)・右肩関節痛の改善事例

まとめ|ストレッチで痛みを和らげながら無理なく改善へ

まとめ|ストレッチで痛みを和らげながら無理なく改善へ

この章では、これまでのポイントを整理し、脊柱管狭窄症による痛みや歩行のつらさと向き合う上で大切な考え方をまとめてお伝えします。

脊柱管狭窄症の改善には、痛みと向き合い、正しい方向に身体を整えていく意識が重要となります。

すぐに成果が見えなくても、ご自身の身体が少しずつ変化している過程を信じて継続することが必要です。

安全第一・痛みのない範囲で

ストレッチは安全に行うことが何より大切です。

痛みを我慢して無理に行うのではなく、痛みの出ない範囲でゆっくり呼吸を合わせながら行うことで効果が期待できます。

痛みが出たり、不安を感じる場合はその場で中止し、姿勢を調整したり休息を挟む方法をおすすめします。

できる範囲で続けることが大切

1日に10分でも構いません。

継続することで筋肉や関節の柔軟性が少しずつ向上し、神経への圧迫が和らぎ、痛みが軽減しやすくなります。

短期間の変化よりも、数週間・数ヶ月単位での改善を目指すことが大切です。

脊柱管狭窄症と向き合う上で、ストレッチと生活動作の工夫を両立することが改善への近道となります。

ご自身に合ったペースで取り組むことで、少しずつ歩ける距離が増え、痛みと付き合いやすくなります。

身体の変化を感じながら、焦らず着実に続けていきましょう。

本記事でもお悩みを解決できない場合は、ぜひ弊社までご相談ください

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この記事を書いた人
岡 民雄

岡 民雄

理学療法士

2011年に理学療法士免許を取得。急性期・回復期・維持期・自費リハビリ、全てのステージのリハビリを経験。急性期ではSCU(脳卒中集中治療室)にも勤務。これまで主に脳血管疾患・整形外科疾患・神経難病の方のリハビリに携わり、学会での発表や講習会でのアシスタントなどを行なう。2023年4月から大阪市にある脳神経リハビリセンター大阪に勤務。