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コラム

みなさんこんにちは脳神経リハビリセンター名古屋の大野です。今回はくも膜下出血に関してお話していこうと思います。くも膜下出血は生活習慣だけに関わらず、リスクが隠れていることがある病気です。若い人でもおこる可能性のある病気ですので、最後まで読んで前兆や予防方法などを知っておきましょう!
また、麻痺がでにくい病気とい言われていますが、実際どうなのかについても、分かりやすく解説していきます!

くも膜下出血とは


くも膜下出血とは動脈の破裂によって、このくも膜下腔に血液が流れだした状態のことをいいます。私たちの脳は3層の膜によって包まれています。内側から軟膜・くも膜・硬膜と言います。くも膜と軟膜の間にはくも膜下腔というスペースがあります。医療従事者のなかでは「SAH(subarachnoidhemorrhage):ザー」と略してよばれることもよくあります。
命の危険を伴いやすい病気であり、できるだけ早い受診が大切になります。
くも膜下出血とは

症状

発症した直後には以下の症状がでることが多いです。

・激しい頭痛
・意識障害
・嘔吐(嘔気)

頭痛に関しては「バットで殴られたような痛み」で、今までに経験したことがないほど強い痛みが突然生じると言われています。激しい頭痛の後、嘔吐や嘔気などの症状がでることもあります。重症の場合は意識消失に至るケースもあります。

原因

くも膜下出血の主な原因は以下の3つがあります。
①脳動脈瘤
②脳動静脈奇形(AVM)
③その他

①脳動脈瘤
くも膜下出血をきたす最大の原因です。約8割が、脳動脈瘤が原因で発症すると言われています。脳動脈瘤とは脳の血管の分岐部などにこぶのようなもの(動脈瘤)ができた状態のことを言います。動脈瘤がおおきければ大きいほど破裂し出血のリスクが高まります。一般に5mm以上であると治療の検討が推奨されています。
経過とともに大きくなることもあるため、小さくても脳動脈瘤のある人は定期的に検査を行い、大きくなってないか確認する必要があります。また、血圧の上昇により破裂のリスクが高まるため、血圧を下げる治療を行ったり、血圧を過度に上げる動作をひかえる必要があります。
脳動脈瘤の原因は不明で、先天的なものと後天的なもの(高血圧・動脈硬化などによる)があります。
動脈瘤

②脳動静脈奇形(AVM)
脳動脈奇形とは動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながり、異常な血管のかたまり(ナイダス)を形成する病気です。毛細血管がないため、血液が動脈から静脈に一気にながれることで負担がかかり、破裂するリスクがたかくなります。多くは生まれる前から〜小児にかけてつくられます。遺伝することは基本的にはないと言われています。
脳動静脈奇形の破裂の頻度は年間10万人に1人程度ですが、よく発生する年齢は20〜40歳と比較的若い年代に多いです。

③その他
くも膜下出血に関しては、喫煙・高血圧・過度な飲酒はリスクを高める一方で。コレステロール値、、心疾患、糖尿病、などとは関連しないと報告されています。
くも膜下出血のリスク比

Topics|遺伝は関係あるの?
くも膜下出血には家族歴が危険因子にあるともいわれています。脳動脈瘤がある患者の近親者の約4%に脳動脈瘤があるとの報告もあります。必ずしも発症するとは限りませんが、脳動脈瘤がある場合、大きさによってはリスクは非常に高くなります。

合併症

脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)
脳血管攣縮とは簡単にいうと血管のけいれんのようなもので、くも膜下出血の発症から4~14日頃に起こりやすいと言われています。脳血管攣縮はクモ膜下出血後に最も気を付ける必要のある症状のうちの一つです。のちに詳しく述べますが、くも膜下出血自体は麻痺を引き起こしにくいといわれています。しかし、脳血管攣縮によって血管が過度に収縮すると、脳梗塞を引き起こすこともあります。私が急性期病院で勤務していたころも、くも膜下出血発症直後の方のリハビリは特に血圧に注意して進めていました。

水頭症
水頭症とは脳室内に水(脳脊髄液)がたまる病気です。こちらもクモ膜下出血と合併しやすい症状の1つで、出血後約1ヵ月程でおきることが多いです。水頭症になると麻痺がなくても歩行障害を引きおこしたりします。
もともと脳室内は脳脊髄液でみたされていますが、なんらかの原因で循環障害がおきると、脳室のなかで脳脊髄液がたまり脳を圧迫します。これによって様々な症状がでてきます。なかでも下記の3つは水頭症の三大症状とも言われています。

①歩行障害
②尿失禁
③認知機能低下

水頭症の治療にはシャント術という手術が行われることが多いです。
脳脊髄液がたまる病気ですので、それを逃がすための通り道を作る手術になります。通り道をつくる場所によって名前がかわり、脳室と腹腔をつなぐものをVPシャント、腰椎くも膜下腔と腹腔をつなぐものをLPシャントとよびます。

予防方法

前兆に注意
くも膜下出血にも前兆がでることがあります。症状はしばらくして消失し、その後にくも膜下出血を引き起こします。

・血圧の急激な変動
・頭痛
・嘔吐(嘔気)
・視力低下
・めまい
・意識障害
このような症状が気になる方は一度病院での相談をおすすめします。

くも膜下出血の治療

くも膜下出血の治療

治療方法

発症直後の治療は血圧管理が重要となります。脳動脈瘤の破裂による場合は、次のような治療があります。

①コイル塞栓術
②開頭クリッピング術
③脳脊髄液ドレナージ術

予後

出血の場所・量などによっても症状は様々ですが、重症になると死亡に至るケースもあります。
目安として「1/3ルール」といって、1/3の方が軽症で社会復帰でき、1/3の方が生存はできるものの後遺症が残る、1/3の方が残念ながら死亡に至ると言われています。

3分の1ルール

注意点

まずは血圧に注意です!
脳の中での出血のため、出血が広げないように血圧が上がりすぎないように注意します。さらに、先ほど述べたように脳血管攣縮による脳梗塞のリスクも秘めています。そのため、血圧を上げすぎず・下げすぎずが大切になってきます。

くも膜下出血で麻痺がでにくい理由

くも膜下出血で麻痺が出にくい理由

なぜ麻痺がでにくいか

通常、運動をつかさどる錐体路とよばれる部位が直接障害されることが少ないからです。脳出血の場合は、脳の中で出血が起こるため、錐体路が障害を受けることが多くあります。それに対してくも膜下出血の場合は、脳の外のくも膜下腔で出血が起きるため麻痺が起こりにくいです。

出やすい症状(後遺症)

くも膜下出血で特にでやすい症状を紹介します。
①歩行障害
②高次脳機能障害
③意識障害

①歩行障害
麻痺なくても歩行に障害がでることは多くあります。原因はさまざまですが、水頭症の合併、意識障害、廃用症候群などがあります。麻痺自体がなく、水頭症・意識障害による歩行障害であれば、その症状が改善すれば歩行ができることも多いです。単純に廃用症候群で力が落ちたり関節が硬くなっているだけであれば、リハビリによって歩行ができる可能性があります。

②高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、人間の脳に備わっている記憶や思考など高度な脳機能に関する障害のことをいいます。症状は多岐に渡り、以下のようなものがあります。
・注意障害:注意力・集中力の障害
・記憶障害:記憶力の障害
・遂行機能障害:計画を立てて行動する一連の流れの障害
・社会的行動障害:感情のコントロールや自発性などの障害

③意識障害
簡単にいうと意識障害とは意識がはっきりしない状態のことをいいます。覚醒が悪くぼーっとしている状態や、自分と周りのことが認識できない(私は誰??)状態などがあります。脳の中の出血などによって脳が腫れたりすることで生じます。

くも膜下出血と麻痺の関係

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くも膜下出血と麻痺の関係

なぜ麻痺が生じるのか

一般的には出血がくも膜下腔という場所で起きるため麻痺は生じにくいです。
しかし、以下の場合にはくも膜下でも麻痺が起きる場合があります。

血腫による圧迫
破裂する脳動脈瘤によっては脳の中に血腫ができ、圧迫などにより麻痺症状をきたすことがあります。

脳血管攣縮後の脳梗塞
脳血管攣縮は先ほど述べたように脳血管の痙攣のようなものです。これにより、脳梗塞が合併した場合は、その部位によって麻痺や感覚障害や失語症といった、脳梗塞の症状がでることになります。
▶︎脳梗塞と麻痺の関係についてはコチラの記事で解説しています!▶︎脳梗塞と麻痺について

外傷などで脳内出血も合併する場合
くも膜下出血は頭をぶつけるなどの外傷でもおきることがあります。(外傷性くも膜下出血)
これにより、脳内の出血を合併したりすると、その出血部位によっては麻痺が生じることもあります。

なぜ麻痺が起きているのかはいずれも脳画像をみることで確認できます。

どこに麻痺がでるのか

麻痺の出る場所は損傷や出血の部位によって様々です。
図のように大まかに脳のどこが手足を支配しているかが決まっています。この場所によって麻痺の程度・出方が決まってきます。

麻痺は治るのか

脳梗塞などを合併せず、くも膜下出血のみの場合は麻痺が改善することもあります。もちろん損傷を受けている部位にもよりますし、意識障害の有無や重症度などでも変わってきますが、比較的運動麻痺が残りにくい疾患とは言われています。

リハビリテーション

リハビリテーションは症状に合わせて内容は変わってきますが、改善のためには必須です。 発症初期は血圧変動に注意しつつ、廃用(力が落ちたり、関節が硬くならないように)予防するため早期からリハビリを開始します。血圧などが落ち着いてからは、麻痺の改善や意識障害の改善に向けて積極的に立つ・歩くなどのリハビリを進めていきます。


くも膜下出血は若年でも起きることがある疾患です。しかし、前兆や血管の状態を知っていればリスクを減らせる可能性はあります。頭痛・嘔気などの症状が気になる方はそのままにせず病院で相談してみましょう。   くも膜下出血後の麻痺は軽度の場合も多いですが、歩行障害などによりリハビリを必要とする方も多いです。歩行・麻痺・バランスなど何か気になる症状があれば、ぜひ一度体験に来てみてください!

参考:
一般社団法人日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会.『脳卒中治療ガイドライン2021』.株式会社協和企画.2021年7月15日.150-173

この記事を書いた人
大野 真之介

大野 真之介

理学療法士 / 認定理学療法士(脳卒中)

2016年に理学療法士免許を取得。同年より愛知県内の大学病院で勤務し、回復期・急性期・外来のリハビリを経験。急性期ではSCU(脳卒中集中治療室)の専任理学療法士としても勤務。
これまで主に脳血管疾患・脊髄損傷・神経難病の方のリハビリに携わる。2020年に日本理学療法士協会の認定資格である認定理学療法士(脳卒中)を取得。2022年11月から脳神経リハビリセンター名古屋に勤務。
私は常に「一緒に進めるリハビリ」を心がけています。療法士がリハビリをするのではなく、お客様にも“動き方”や“変化”を知ってもらいながら、運動を通して目標達成を目指しています。目標に向けて一緒に挑戦していきましょう。全力でサポートします。