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【脊髄損傷の急性期関連必見!】回復を左右する初動と慢性期移行対応

こんにちは!大阪府大阪市にある脳神経リハビリセンター大阪で理学療法士をしている岡です。理学療法士のキャリアは13年になります。

脊髄損傷は急性期に正しい対応をすることで、回復が困難になる可能性を抑えることができます。

この記事では、脊髄損傷の基礎知識から最新の治療までお伝えしていきます。

これにより、急性期の適切な対応方法が分かり、患者様やご家族の助けとなる具体的な方法が把握できます。

この記事が、患者様の生活の質を改善する第一歩となれば幸いです。

脊髄損傷の基礎知識

脊髄損傷の基礎知識

この章では、脊髄損傷についての基本的な知識、その原因、脊髄の機能、診断方法について説明します。

脊髄損傷とは?

脊髄損傷とは、事故や病気によって脊髄が損傷を受けることです。

これにより、感覚や運動機能などが失われる場合があります。

主な原因としては次のものが挙げられています。

  • 交通事故による強い衝撃
  • スポーツ中の不慮の事故
  • 転倒(高齢者で多い)

脊髄損傷の急性期について

急性期とは、脊髄損傷が発生してから2-3週間ほどを言う場合が多いですが、この時期の対応が患者様の予後を大きく左右します。迅速な医療介入が必要不可欠です。

脊髄の重要な機能

脊髄は、神経細胞と神経線維の束で構成され、脳からの命令を体の各部に伝え、また調整する重要な役割を担います。

脊髄の主な機能は以下の通りです。

  • 運動機能の制御
  • 感覚情報の伝達
  • 自律神経の調節

脊髄損傷の種類について

脊髄損傷には様々なタイプがあり、それぞれ異なる治療方法とリハビリテーションが必要です。

  • 完全損傷: 脊髄が完全に断たれ、損傷部位以下の感覚と運動機能が失われる。
  • 不完全損傷: 脊髄が部分的に損傷を受けるが、ある程度の感覚や運動機能が残る。

これらの損傷の種類により、治療方針や予後が大きく異なるため、正確な診断がとても大切です。

日本における脊髄損傷の発生統計

日本における脊髄損傷は最新の統計によると、年間の発生率100万人あたり49件と推定されています。

中でも、70歳が中央値であり、70代が最も多い年齢層です。

男女比は3:1で、男性の方が発生率が高いことが示されています。

脊髄損傷の種類では、88.1%が頚部の損傷で、これにより多くの患者様が重度の障害を持つこととなります。

また、損傷の程度としては、Frankel D(一部の運動機能が残る不完全麻痺)が最も多く、全体の46.3%を占めています。

原因として目立ったのは次の2つです。

  • 平地での転倒(38.6%)
  • 交通事故(20.1%)

前述の原因と、少し異なる結果です。

平地での転倒が多いのは、日本の高齢化とともに、高齢者の転倒による事故が増加してきた結果です。

日本でも、若年層ではスポーツが原因での脊髄損傷が多く見られます。

10代の若者では、スポーツによる損傷が43.2%を占めています。

このように、日本における脊髄損傷の傾向は、高齢化とともに変化してきており、頚部損傷や不完全麻痺の増加が顕著です。

これらのデータは、今後の予防策や治療法の改善に向けた重要な指標とされています。

引用:The National Center for Biotechnology Information 
   A nationwide survey on the incidence and characteristics of traumatic spinal cord injury in Japan in 2018

急性期における身体の反応と症状

脊髄損傷の急性期では、損傷直後から体内で様々な生理的変化が起こり、これに伴って症状が急速に進行します。この段階での適切な治療は、後の機能回復において非常に重要です。

急性期に現れる主な反応として、一次損傷と二次損傷があります。

  • 一次損傷:外力による脊髄そのものへの直接的なダメージ。
  • 二次損傷:一次損傷に続いて発生する炎症反応や浮腫、血液の循環不全による神経細胞の損傷拡大。

これらの損傷が進行することで、以下のような症状が見られます。

  • 感覚の喪失:損傷部位より下の感覚が消失、または低下します。
  • 運動機能の麻痺:損傷部位より下の運動が行ないにくくなるか、完全に動かせなくなります。
  • 神経性ショック:血圧低下や呼吸不全が生じ、生命を脅かすこともあります。
  • 膀胱や腸、肛門の機能不全:排尿や排便のコントロールができなくなり、緊急の処置が必要です。

急性期の症状は非常に多岐にわたり、迅速な診断と対応が回復の鍵となります。

この段階での介入により、二次損傷を最小限に抑えられる可能性があります。

急性期の診断と臨床評価

急性期の診断と臨床評価

この章では、脊髄損傷が疑われる急性期に行う診断方法と臨床評価について解説します。

正確な診断は治療方針を決定する上で非常に大切です。

脊髄損傷の診断方法

脊髄損傷の正確な診断は、適切な治療計画を立てるために不可欠です。

主な診断技術を紹介します。

  • 画像診断: MRIやCTスキャンを利用して、脊髄や周辺組織の損傷を詳細に観察します。
  • 電気生理学的検査: 脊髄の電気的活動を記録し、神経機能の損傷具合を評価します。
  • 臨床評価: 患者様の感覚機能と運動機能を詳しく評価することで、損傷レベルを把握します。

これらの方法により、脊髄損傷の種類、程度、及び影響を受けた範囲を正確に把握し、最適な治療を受けることが可能となります。

急性期の評価で見逃せないポイント

特に急性期の評価では、以下の点に注意が払われます。

  • 神経損傷の進行:時間とともに変化する症状の追跡。
  • 損傷部位の特定:症状から影響を受けている神経の特定。
  • 迅速な対応:二次損傷の防止に向けての迅速な治療開始。

急性期の治療

急性期の治療

この章では、脊髄損傷の急性期における治療法に焦点を当て、薬物療法、外科的治療、保存的治療について解説します。

急性期の適切な治療が、患者様の回復に大きく影響します。

保存的治療について

保存的治療は、手術をせずに薬や食事、運動などによって病気を治したり症状を改善したりする治療法です。

  • 薬物療法:急性期の薬物療法は、二次損傷を防ぎ、病態を安定させることで速やかにリハビリテーションに移行する事を目的としています。
    •  

    • ステロイド系抗炎症薬:一次損傷に続いて発生する炎症反応や浮腫、血液の循環不全による神経細胞の損傷拡大を防ぐためのものです。
  • 固定装置の使用:脊椎を安定させ、自然治癒を促します。
  • 理学療法:運動機能を改善し、二次的な合併症を防ぎます。

外科的治療について

外科的治療は、脊髄損傷の急性期において非常に重要です。

この治療の主目的は、脊髄を圧迫している骨折片などを取り除き、脊椎を安定させ、神経組織への損傷を最小限に抑えることです。

以下に、主に行われる外科的手術の種類とその目的を説明します。

  • 除圧術:
    圧迫された脊髄や神経根などへの圧力を取り除いて症状を緩和します。

       これにより、さらなる神経損傷を防ぎます。

  • 固定術:
    不安定な脊椎を金属のプレートやネジを使用して固定します。

       これは、脊椎が自然に治癒する助けとなります。

これらの手術は、高度な技術を要し、経験豊富な医療チームによる精密な計画と技術が必要です。

また、手術後の回復期間やその後のリハビリテーションの質が、治療成果に大きく影響することも見逃せません。

患者様とご家族様へのサポート

患者様とご家族様へのサポート

脊髄損傷の急性期を乗り越えるためには、患者様だけでなく、ご家族様の精神的なサポートも重要です。

本章では、急性期における精神的なサポート、家族を支えるための体制、社会資源、患者様の自己管理の重要性について説明します。

急性期における精神的サポート

急性期の精神的サポートは患者様が直面する不安やストレスを軽減し、治療への積極的な取り組みを促すために不可欠です。

  • 専門のカウンセリング:患者様とご家族様をサポートする専門のカウンセラーや心理療法士によるカウンセリングがあります。
  • グループセラピー:他の患者様やご家族との情報共有と支援の場を設け、共感や理解を深めます。
  • 学習プログラム:病気の理解を深めるための学習プログラムを通じて、不安を軽減します。

ご家族のための支援体制

家族のサポート体制の整備は、患者様の回復を助けるために重要です。

次のような支援があります。

  • 治療計画の共有:治療や今後の計画をご家族様と共有し、協力体制を築きます。
  • 社会資源の活用:地域の支援団体や利用可能なサービスについての情報を収集します。

社会資源とリハビリテーションサービスの案内

退院時にソーシャルワーカーが、病院や地域社会が提供する多様なリハビリテーションサービスと社会資源を患者様とご家族様に案内します。

これにより、家庭でのケアが容易になり、社会復帰をサポートできます。

患者様の自己管理

自己管理は、患者様が自身の状態を理解し、日常生活での対応を学ぶために重要です。

具体的な自己管理方法を紹介します。

  • 症状の記録:日常的に症状を記録することにより、変化に気付くことができます。
  • 治療計画の遂行:医師やセラピストと共に設定した治療計画を守り、定期的にチェックを受けます。

長期的視点と新しい治療法

長期的視点と新しい治療法

この章では、脊髄損傷の治療が急性期から慢性期へと移行する過程、新しい治療について説明します。

急性期から慢性期への遷移と管理

急性期の管理から慢性期のケアへの遷移は、患者様の生活の質を大きく左右します。

  • 症状の変化に応じて治療プランを定期的に更新することで、最適なサポートを受けられます。

最新の治療

脊髄の二次損傷を抑制する治療薬などの研究が進められています。

薬物療法の進歩により、より質の高い生活が送れる可能性が高まると考えられます。

機能回復への取り組み

機能回復への取り組み

急性期から慢性期への遷移において、リハビリテーションは患者様の回復過程に大切な役割を果たします。

リハビリテーションにおけるポイントを説明します。

  • 早期リハビリテーションの重要性:
    • 早期介入:発症直後からリハビリテーションを開始することで、患者様の回復可能性を高めます。
    • 複合的アプローチ: 理学療法、作業療法など、複数の専門分野からのアプローチが総合的なリハビリテーションとなります。
  • 具体的なリハビリテーション手法:
    • 運動療法: 一人ひとりに合ったリハビリプログラムにより、筋力、柔軟性、持久力の向上を目指します。
    • 神経再教育: 損傷した神経の代わりとなる経路の強化と機能改善を促進するために、特定の動作やタスクの反復訓練を行います。
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  • リハビリテーションの際の課題:
    • 課題: 慢性期に入ると、回復が遅くなり患者様やご家族様がフラストレーションを感じやすくなることがあります。
    • 対策: 心理的サポートやカウンセリングを積極的に取り入れ、精神的な側面から支援を受けます。

適切なリハビリテーション計画と患者様一人ひとりに合わせた治療の提供によって、最大限の機能回復を目指すことが、この遷移期においては重要です。

まとめ

まとめ

ここまで脊髄損傷急性期の全般的な管理と、各段階でのリハビリテーションの進行についてお伝えしてきました。

主なポイントを振り返ります。

  • 急性期のリハビリテーションは、患者様の回復を大きく左右します。
  • 早期診断と治療は、機能回復に必要不可欠な要素です。
  • 多職種間の協力は効果的な治療成果を得るために大切です。
  • 患者様一人ひとりに合わせたリハビリテーションプランの重要性がますます高まっています。

この記事が、患者様やご家族様の日々の生活の大きな励みとなることを心から願っています。

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この記事を書いた人
岡 民雄

岡 民雄

理学療法士

2011年に理学療法士免許を取得。急性期・回復期・維持期・自費リハビリ、全てのステージのリハビリを経験。急性期ではSCU(脳卒中集中治療室)にも勤務。これまで主に脳血管疾患・整形外科疾患・神経難病の方のリハビリに携わり、学会での発表や講習会でのアシスタントなどを行なう。2023年4月から大阪市にある脳神経リハビリセンター大阪に勤務。