【発症後6か月】左片麻痺に対する上肢機能改善 ― 肩甲帯の過緊張と痛みの軽減を通した随意運動の再獲得
上肢機能比較
- 50代
- 女性
ご利用者様情報
- 年代
- 50代
- 性別
- 女性
- 疾患名
- 脳梗塞
- 発症からの期間
- 約6か月
- 症状
- 左片麻痺
- ご利用期間・回数
- 8回・週に1回
- リハビリ目標
- 生活での左手参加(特に家事動作)
屋外歩行安定性向上
リハビリの記録
RECORDご利用までの経緯
入院中に当施設へお問い合わせをいただき、退院後にリハビリ体験へお越しいただきました。
歩行に関しては屋外での独歩自立が可能なレベルまで回復されていましたが、左片麻痺に伴う肩甲帯および肩周囲の過緊張が強く、上肢機能の改善が十分に得られていない状況でした。
特に、左肩甲帯の固定と上腕の過剰な共同運動パターンが強く、随意的な手指の操作や前腕の分離運動が困難であったため、日常生活の中で「左手を使える場面がほとんどない」と感じられていました。
そのため、「左手をもっと使えるようになりたい」という強い希望を持っておられました。
体験時の状況
初回体験時、ご本人は装具や杖を使用せずに独歩で来所され、移動能力としては十分に自立されていました。
しかし一方で、左上肢に関しては、肩甲帯・肩周囲・胸部筋群の過緊張が強く、随意的な運動を引き出しにくい状態が顕著でした。
特に、左肩甲帯は固定が強く、肩甲骨の可動性が乏しいため、上腕の動きが肩甲帯の代償運動に依存しやすく、結果として望ましい分離運動が成立しにくい状況でした。
また、動作時には左肩関節周囲に痛みが生じることもあり、痛みの回避がさらに過緊張を助長している印象がありました。
さらに、ご本人は一つひとつの動作に対して非常に真剣に取り組まれる方であり、動かそうとする意識が強いほど、全身に力が入り、協調性の低い運動パターンが出現しやすい状態でした。
そのため、肩関節や肩甲帯を動かそうとすると、体幹・下肢まで含めた全身的な緊張が高まり、目的とする上肢の運動が阻害されていました。
これらの所見から、体験時点では
・過緊張による運動の質の低下
・痛みによる防御的な運動パターン
・肩甲帯の固定化による上肢機能の制限
が複合的に影響し、左手の能力を十分に発揮できない状況であると判断しました。
リハビリ内容
まず身体全体の過緊張を整え、痛みの原因となっている不適切な筋活動を抑制することから介入をスタートしました。
左肩関節周囲の痛みは、肩甲帯の固定と胸部筋群の過活動が背景にあり、これらが上肢の随意運動を阻害していると判断しました。
そのため、体幹・胸郭・肩甲骨の緊張を段階的に調整し、痛みの軽減と姿勢セットアップの改善を図りました。
痛みが緩和されたことを確認した後、左上肢の機能向上を目的としたアプローチへ移行しました。
肩甲帯の可動性を確保しつつ、肩関節の求心性を高めるように誘導し、痛みの出ない範囲での随意的な最大可動域の運動を促しました。
これにより、過剰な運動パターンを抑制し、分離した上肢運動を引き出す準備を整えました。
また、背部筋群の緊張が高く、胸郭の可動性が制限されていたため、骨盤の動きを利用して体幹の回旋・側屈を引き出し、胸郭と肩甲帯の連動性を改善するアプローチを実施しました。骨盤からの誘導により、背部の過緊張が緩和され、肩甲帯の自由度が高まることで、上肢の運動がより滑らかに引き出されるようになりました。
これらの介入を通して、
・過緊張の抑制
・痛みの軽減
・肩甲帯の可動性改善
・上肢の随意運動の質の向上
を段階的に達成し、左上肢の機能発揮に向けた基盤を整えていきました。
リハビリの結果
RESULT痛みが取り除かれたことで、肩甲帯の固定が緩み、胸郭・体幹との連動性が高まり、随意的に動かせる範囲が明らかに広がりました。
また、肩甲帯の可動性が改善したことで、上腕の過剰な共同運動が減少し、肘関節や手指の分離運動が引き出しやすくなりました。
その結果、肘の屈伸や手指の操作がより滑らかで協調性の高い動きへと変化し、左上肢全体の運動の質が向上しました。
これらは、
・過緊張の抑制
・痛みの除去
・肩甲帯と体幹の連動性改善
・分離運動の再獲得
といった段階的なプロセスが積み重なった結果であり、上肢機能の発揮に向けた重要な基盤が整ったと考えられます。











しかし、ご本人様が自主練習にも積極的に取り組まれ、リハビリにも前向きに参加してくださったことで、日常生活の中でも痛みが軽減し、随意的に動かせる範囲が確実に広がってきました。動きの質が変化し、肩甲帯や体幹との協調性が高まってきたことは、大きな成果だと感じています。
大変なリハビリだったかと思いますが、ここまで努力を続けてくださり、本当にありがとうございました。
今後も、目標に向かって一緒に取り組んでいけるよう、精一杯サポートさせていただきます。引き続きよろしくお願いいたします。
前川 裕樹