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脳梗塞とは

脳画像 MRI

脳梗塞とはどんな病気?

一言で言うと、脳の血管がつまる病気です。そして、脳の血管のつまる場所や大きさによって、さまざまな症状が出ます。脳梗塞は脳卒中全体の60〜70%程を占めます。
もともと、脳には多くの血管が流れており、脳のすみずみまで栄養を送っています。この通り道がなんらかの原因で「つまる」すなわち「梗塞」することによって、その先の脳細胞に栄養が行きわたらず、脳の細胞が壊死することで障害が発生します。

脳梗塞の種類

脳梗塞の種類は大きく以下の3つに分けられます。
①アテローム血栓性脳梗塞
②心原性脳梗塞
③ラクナ梗塞

①アテローム血栓性脳梗塞
アテローム血栓性の脳梗塞とは、血管の中にプラークという脂肪の塊のようなものができて詰まる脳梗塞になります。プラークは飲酒・肥満などとも関係があり、体内に蓄積されたコレステロールが原因でできます。これらが徐々に血管の通り道に蓄積し、だんだん狭くなって梗塞に至るため、徐々に症状が出ることが多いです。
一過性脳虚血発作が前兆で出ることもあります。

リスクの高い方
・高脂血症の方
・高血圧の方
・糖尿病の方

②心原性脳梗塞
心原性とは心臓内にできた塞栓(血のかたまり)が脳に飛ぶことで起きる脳梗塞です。血栓が飛んできて起きるため、アテロームとは逆に急に症状が出ることが多いです。また、太い血管が詰まることが多く病巣が大きくなりやすいため、命に危険が及ぶこともあります。

リスクの高い方
・心房細動などの心疾患のある方

③ラクナ梗塞
ラクナ梗塞とは血管の穿通枝という、太い血管から枝わかれした先の血管が詰まる脳梗塞です。主に直径15mm以下の小さな脳梗塞のことを指します。高血圧が続くことによる動脈硬化で血管が閉塞することで生じます。
症状が軽い場合も多いですが、部位によっては麻痺が強く出ることもあります。また、再発のリスクは非常に高いです。1本だけが動脈硬化になっていたとは考えずらく、その他の血管にもリスクがあると言えます。そのため、症状が軽いからといってそのまま放置せず、必ず医療機関で相談をしてみてください。

リスクの高い方
・高血圧の方
・動脈硬化のある方

○その他の脳梗塞
主な分類は先に述べた3種類ですが、その他にBAD(Branch atheromatous disease)といって、アテローム血栓性とラクナ梗塞の中間のタイプも存在します。BADは穿通枝(枝分かれした血管)の手前の方での梗塞となります。ラクナ梗塞と比較し、梗塞巣が大きくなります。一般的には予後不良と言われ、症状が進行しやすいことから注意が必要な病型と言えます。

脳梗塞の原因

脳梗塞のリスクの高い疾患・症状は先に上げた通りです。その疾患毎に原因は違ってきますので見ていきましょう。

「糖尿病」肥満、運動不足、ストレス、遺伝(1型糖尿病)
「高血圧」喫煙、飲酒、ストレス、運動不足、加齢、体質
「動脈硬化」肥満、高血圧、糖尿病、喫煙
「高脂血症」肥満、過食、高脂肪食、ストレス、運動不足
「心房細動」加齢、心臓病の既往、高血圧、肥満、糖尿病、飲酒、生活習慣

いずれも生活習慣が大きく関わってきます。生活習慣病の予防に関してはこちらで詳しく解説していますのでよければご覧下さい!

(参考:脳卒中と生活習慣病の関わりとは?

脳梗塞の症状

脳梗塞を発症

脳梗塞で出る主な症状

脳梗塞の症状は非常に多岐に渡ります。脳には、「体を動かす」「記憶する」「感じる」「考える」など様々な役割があります。そして、役割ごとに脳の各場所で割り当てられています。さらにそれらは、互いに繊維で繋がっています。様々な役割の駅があり、線路で繋がっているようなイメージです。
そのため、梗塞が起きる場所によって症状が変わってきます。
運動をつかさどる場所が梗塞すれば運動麻痺が出ます。記憶をつかさどる場所に梗塞が起きれば記憶障害が出ます。そしてその場所と繊維でつながっている部分にも影響が出ます。
このように、症状は脳梗塞の部位によって違ってくるため、症状は一概には言えません。
しかし、その中でもその中でも一般的に出やすい症状を紹介しようと思います!

・運動麻痺
・筋力低下
・注意障害
・嚥下障害
・言語障害
・痙縮(痙性)
・腱反射の亢進
・バランス障害
・視覚・視野の障害
・感覚麻痺(鈍さ・痺れ)
・巧緻性(細かい動作をする能力)の低下

これらの症状が1つの場合もありますし、複数出る場合もあります。
そして、その程度は人によって違います。

その他の後遺症

後遺症の出方は大きく左右の脳で分けられます。
①右側の脳(右半球)の障害
②左側の脳(左半球)の障害

①右側の脳(右半球)の障害
・左片麻痺
・注意障害
・半側空間無視

②左側の脳(左半球)の障害
・右片麻痺
・失語症
・失行症

あくまで左右で出やすい症状が決まっているということであり、右半球の障害でも失語症が出る場合などもあります。

脳梗塞と麻痺の関係

片麻痺のリハビリ
脳梗塞と麻痺に関して更に詳しくみていきます。

片麻痺とは

梗塞の部位症状が多岐に渡ることは先ほど解説させて頂きました。
その中でも、特に有名な症状の「片麻痺」についてお話ししていきます。
片麻痺とは、左右どちらかに生じる運動の麻痺のことを指します。人間の体は、全て脳が支配しており、右の脳が左半身を、左の脳が右半身をコントロールしています。そのため、左の脳に脳梗塞が生じた場合には右側に麻痺が出て、これを「“右”片麻痺」と言います。一般的には麻痺とは運動の麻痺のことを指しますが、感覚の障害のことを感覚麻痺ということもあります。

片麻痺の原因

片麻痺の原因は脳梗塞・脳出血・外傷などにより、脳〜手足を動かす神経の通り路のうち、どこかで障害が起きることです。下の図のように、運動野(運動をつかさどる脳の部分)や、錐体路(運動野から手足を動かす神経まで繋がる通り道)のどこで障害を受けても片麻痺が生じます。

麻痺になる原因

麻痺になる原因

片麻痺で手足が動かしにくくなる理由

運動が生じているのであれば、少なくとも完全に脳細胞・神経繊維が障害されているわけはなく、下の図のように支配する神経が少なくなっているイメージです。
そのため、思ったように運動ができず自分の意図した運動が大きくなりすぎたり、動きにくかったりします。

片麻痺になる理由

片麻痺の状態

脳梗塞による麻痺の改善

麻痺の回復

麻痺は完全に治るの?

一番気になるとこですが、完全な回復は難しいのが現状です・・・
脳梗塞になり壊死してしまった細胞は戻ることはありませんが、それでも回復を見込める部分はあります。下の図のように残った神経繊維が強化されたり、脳の近い部位からの繊維が強化されたりすることで運動の改善の可能性があると言われています。

麻痺の回復

麻痺の回復

麻痺はどこまで治るのか

症状のところでもお話ししたように、人によって症状・重症度はさまざまで一概には言えません。そして、損傷の部位などによってもどこまで回復するかは変わってきます。そのため、脳梗塞の程度や身体の状態を評価し、リハビリをする中でどこまでの改善を目指せるか、相談しながらリハビリを進めていきます。

脳梗塞の予防

長期的には、脳梗塞の原因となりうる、高血圧・高脂血症・糖尿病などを予防することが大切です。飲酒・喫煙・過食などを控えるよう心がけましょう。
高血圧は長期間続くことで動脈硬化が進むため、定期的な確認も必要となります。高い状態が続くようであれば、薬の調整なども考えてみてもよいかもしれません。
その他にこまめな水分摂取も重要です。特に夏場など脱水により、血管の中の血液がドロドロになることで梗塞をきたしやすくなるため注意です。冬場も気づかないうちに脱水になるリスクはあるため、意識的に摂取することが大切です。

Topics
早期であれば血栓を溶かす治療も
発症直後4.5時間以内であればt-PA療法という、薬で血栓を溶かす治療方法も適応になる場合があります。t-PA療法により、血管が再開通して症状が改善する場合があります。そのため、症状に気づいたらすぐに受診することが鍵になります。
初期症状を見分けるための、“F A S T”というものを紹介します。

F A S Tは以下の4つの言葉の頭文字です。

1. Face(顔)
2. Arm(腕)
3. Speech(言葉)
4. Time(時間)

「Face(顔)」
片側の顔が動きずらい、顔がゆがむ、口角が下がる

「Arm(腕)」
手のひらを上にして腕をまっすぐ上げたとき、片側だけ落ちてくる

「Speech(言葉)」
呂律が回らない、言葉が出ない

「Time(時間)」
上記の症状があればすぐに受診をしましょう。t-PT療法の適応は4.5時間以内といいましたが、4.5時間以内に治療を開始する必要があるため、症状に気づいたときにはいかに早く行くかが重要です。
そして「いつから症状があったか(Time)」をしっかり覚えておき伝えましょう。

この記事を書いた人
大野 真之介

大野 真之介

理学療法士 / 認定理学療法士(脳卒中)

2016年に理学療法士免許を取得。同年より愛知県内の大学病院で勤務し、回復期・急性期・外来のリハビリを経験。急性期ではSCU(脳卒中集中治療室)の専任理学療法士としても勤務。
これまで主に脳血管疾患・脊髄損傷・神経難病の方のリハビリに携わる。2020年に日本理学療法士協会の認定資格である認定理学療法士(脳卒中)を取得。2022年11月から脳神経リハビリセンター名古屋に勤務。
私は常に「一緒に進めるリハビリ」を心がけています。療法士がリハビリをするのではなく、お客様にも“動き方”や“変化”を知ってもらいながら、運動を通して目標達成を目指しています。目標に向けて一緒に挑戦していきましょう。全力でサポートします。