概要
OVERVIEW「パーキンソン病」は、脳細胞の異常変化に起因する脳の変性疾患です。この病気では、運動機能、認知・記憶の低下、さらに自律神経障害など、多彩な症状が見られます。症状の中でも、とくに著しいのが運動障害です。しばしば「鉛を背負って歩いているようだ」と形容されるように、動作が極端に鈍く、そして緩慢となります。さらに、パーキンソン病は進行性の疾患です。加齢にともない、病状が重度化する可能性があります。
以下、パーキンソン病の疫学情報です(※1・2)。
- 好発年齢:50〜65歳
- 年間有病率(日本):10〜18人/10万人
- 国内患者数:10万人
上記に関しての補足です。好発年齢は50〜65歳とされますが、発症傾向は加齢とともに増加します(※3)。
ただし、若いからと言って発症しないわけではありません。40代以前の年齢層でもパーキンソン病となる可能性があり、この場合は「若年性パーキンソン病」と診断されます。
※1 出典:一般社団法人日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」序章
※2 出典:公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」
※3 出典:厚生労働省資料「6 パーキンソン病」
原因
CAUSEパーキンソン病の原因は脳の異常変化、すなわち「変性」です。脳の中でも、パーキンソン病と関係があるのは中脳です。もっと言えば、中脳にある「黒質」と深く関連しています。従来、中脳は眼球運動との関わりが分かっていましたが、実際の役割はもっと複雑です。運動調節・認知機能・感情・動機づけ・学習など、さまざまな機能にも関連しています。さらに中脳の黒質は、「ドーパミン」という物質がつくられる場所です。ドーパミンは神経から神経へと情報を伝達する物質で、人間の運動を調整します。
パーキンソン病では、黒質にあるドーパミン産生細胞に障害が生じます。この状況を産業にたとえれば、工場がシャットダウンするのと同じです。材料・原料があっても、工場自体が機能してないのなら、なにも産みだせません。
同様にパーキンソン病では、物質産生の工場となる神経が機能せず、脳内にあるべきドーパミンの全体量も減少します。ドーパミン量の低下は、運動の調節にとっては大きな弊害です。動作がぎくしゃくとして滑らかさを欠き、運動全体の円滑性が失われてしまいます。
以上がパーキンソン病の病態です。パーキンソン病の病態(メカニズム)は、解明されつつありますが、根本原因の解明には至っていません。つまり、「なぜドーパミンを産生する神経細胞に異変が起こるのか」という点は未解明です。
パーキンソン病の原因として、たとえば以下の要因が考えられています。
- 遺伝
- 農薬(除草剤・殺虫剤など)
- 乳製品
上記のリスク要因に対して、発症を抑制する因子も報告されています(※)。一例として、たばこ、アルコール、カフェイン、運動、抗酸化作用をもつサプリメントなどが挙げられます。
ただし、促進・抑制因子のいずれも研究途上の段階です。明確な科学的根拠が示されたわけではありません。現時点では参考にとどめ、今後の動向を見ていく必要があります。