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【家族と読みたい】脊髄損傷の症状・生活への影響をレベル別に解説!
脊髄損傷は突然、あなたや大切な人の生活を一変させる可能性があります。
多くの方が「この先の生活はどうなるのか。」「症状は改善するのか。」などの不安や疑問を抱えていますが、確かな情報が手に入らないことも少なくありません。
この記事では、脊髄損傷の原因、レベル別の症状、そして治療について、患者様とご家族に役立つ情報をお伝えします。
お読みいただければ、損傷レベルに応じた症状やリハビリテーションによる回復過程についてのイメージがつかめると思います。
是非、ご一読ください。
脊髄損傷の基礎知識
この章では、脊髄損傷についての基本的な知識、その原因、脊髄の機能、診断方法について説明します。
脊髄損傷とは?
脊髄損傷とは、事故や病気によって脊髄が損傷を受けることです。
これにより、感覚や運動機能が失われる場合があります。
主な原因としては次のものが挙げられています。
- 交通事故による強い衝撃
- スポーツ中の不慮の事故
- 転倒(高齢者で多い)
脊髄の重要な機能
脊髄は、神経細胞の束で構成され、脳からの命令を体の各部に伝える重要な役割を担います。
脊髄の主な機能は以下の通りです。
- 運動機能の制御
- 感覚情報の伝達
- 自律神経の調節
脊髄損傷の種類について
脊髄損傷には様々なタイプがあり、それぞれ異なる治療方法とリハビリテーションが必要です。
- 完全損傷: 脊髄が完全に断たれ、損傷部位以下の感覚と運動機能が失われる。
- 不完全損傷: 脊髄が部分的に損傷を受けるが、ある程度の感覚や運動機能が残る。
これらの損傷の種類により、治療方針や予後が大きく異なるため、正確な診断がとても大切です。
脊髄損傷の診断方法
脊髄損傷の正確な診断は、適切な治療計画を立てるために不可欠です。
主な診断技術を紹介します。
- 画像診断: MRIやCTスキャンを利用して、脊髄や周辺組織の損傷を詳細に観察します。
- 神経生理学的検査: 脊髄の電気的活動を記録し、神経機能の損傷具合を評価します。
- 臨床評価: 患者様の感覚機能と運動機能を詳しく評価することで、損傷レベルを把握します。
これらの方法により、脊髄損傷の種類、程度、及び影響を受けた範囲を正確に把握し、最適な治療を受けることが可能となります。
日本における脊髄損傷の発生統計
日本における脊髄損傷の最新の統計によると、年間の発生率は100万人あたり49件と推定されています。
中でも、70歳が中央値であり、70代が最も多い年齢層です。
男女比は3:1で、男性の方が発生率が高いことが示されています。
脊髄損傷の種類では、88.1%が頚部の損傷で、これにより多くの患者様が重度の障害を持つこととなります。
また、損傷の程度としては、Frankel D(一部の運動機能が残る不完全麻痺)が最も多く、全体の46.3%を占めています。
原因として目立ったのは次の2つです。
- 平地での転倒(38.6%)
- 交通事故(20.1%)
前述の原因と、少し異なる結果です。
平地での転倒が多いのは、日本の高齢化とともに、高齢者の転倒による事故が増加してきた結果です。
日本でも、若年層ではスポーツが原因での脊髄損傷が多く見られます。
10代の若者では、スポーツによる損傷が43.2%を占めています。
このように、日本における脊髄損傷の傾向は、高齢化とともに変化してきており、頚部損傷や不完全麻痺の増加が顕著です。
これらのデータは、今後の予防策や治療法の改善に向けた重要な指標とされています。
引用:The National Center for Biotechnology Information
A nationwide survey on the incidence and characteristics of traumatic spinal cord injury in Japan in 2018
脊髄損傷の症状とレベル別の特徴
脊髄損傷は、損傷のレベル※によって発生する症状が異なります。
この章では、頚髄損傷、胸髄損傷、腰髄損傷それぞれのレベルでどのような位置症状が見られるか、またそれが患者様の生活にどのような影響を与えるかを解説します。
脊髄損傷のレベルとは、頭側からみて脊髄のどの高さ(レベル)まで機能が残っているかの高さ(レベル。高位)をさします。
↓↓↓脊髄損傷のレベルについての詳しい情報はこちらの記事をご覧下さい。
実は重要!脊髄損傷のレベルとは【生活への影響と回復見込みの違い】
頚髄損傷(C1-C8)
頚髄損傷は、脊髄の中でも最も高位に位置するため、損傷レベルによって生じる症状は深刻です。
ここでは、C1からC8までの各レベルで起こりうる症状と、それが患者様の日常生活にどのような影響を与えるかを詳しく解説します。
- C1-C4損傷: このレベルの損傷は、主に重度の呼吸機能障害を引き起こします。人工呼吸器の使用が必須となります。
全身の麻痺があり、話す能力や首以下の任意の動きが制限されるため、患者様は全面的な介護を必要とします。
- C5損傷: 肩の動きと肘の曲げ動作は可能ですが、手首以下の機能はほとんどまたは全くない状態です。
自力での食事やパーソナルケアは困難であり、介助が要求されます。
- C6損傷: 手首の伸展が可能になりますが、細かな手の動作はできません。
一部の日常活動(例えば、電動車椅子の使用)が可能になるものの、多くの活動で支援が必要です。
- C7損傷: 肘の伸展が可能になるため、より多くの自立が見込まれます。
しかし、精密な手の動きは依然として制限されるため、日常生活における多くのタスクには一定の介助が必要です。
- C8損傷: 手指の一部の動きが可能になります。
これにより、食事や書く活動が自立して行えるようになる場合がありますが、依然として多くの生活活動において支援が必要です。
これらのレベルにおける損傷は、患者様の自立性に大きな制約を与えることが多いため、リハビリテーションには個別のニーズに合わせたアプローチが求められます。
胸髄損傷(T1-T12)
胸髄損傷は、胸部に位置する脊髄の損傷で、主に体幹と下肢の機能に影響を与えます。
T1からT12までの損傷がもたらす具体的な症状と、日常生活への影響について詳しく見ていきます。
- T1-T6損傷: このレベルの損傷は、主に上半身の筋力低下を引き起こします。
手足の制御は保たれますが、体幹の制御が困難になるため、座位の安定性が低下します。特に長時間の座位ではサポートが必要となります。
- T7-T12損傷: このレベルでは、体幹機能が損なわれるため、立位や歩行が困難になります。
車椅子の使用が一般的で、日常生活活動において特定の支援が必要です。
また、転倒のリスクが高まるため、安全な移動手段の確保が重要です。
胸髄損傷患者様は、リハビリテーションを通じて、可能な限りの自立を目指します。
しかし、完全な自立が難しい場合でも、適切な支援機器や家庭内環境の調整により、生活の質を向上させることが可能です。
日常生活の質向上には、患者様とご家族の積極的な参加と、専門家による適切な指導が不可欠です。
腰髄損傷(L1-S5)
腰髄損傷及び仙髄損傷は、下半身への影響が主であり、脊髄の最も下部の損傷に関連します。
ここでは、L1からS5までの損傷がもたらす症状と、それに基づくリハビリテーションの方法を詳しく解説します。
- L1-L2損傷: このレベルの損傷では、腰部から下の運動能力が損なわれ、歩行が困難になります。
感覚障害も伴い、下半身の痛みやしびれが生じることがあります。
- L3-L5損傷: 膝の制御が部分的に可能ですが、足首の運動に制限が生じます。
装具を使用しての歩行が可能になる場合もありますが、安定して歩行するためにはリハビリテーションが必要です。
- S1-S5損傷: このレベルの損傷は、膀胱と直腸の機能に影響を及ぼすことが多く、排泄管理が重要な課題となります。
感覚障害も見られ、足の裏や会陰部の感覚が障害されることがあります。
これらのレベルの損傷に対するリハビリテーションは、主に機能回復を目指し、患者様ができる限り自立できるように支援します。
リハビリテーションプログラムには、理学療法、作業療法、などがあり、特定の機能の改善に焦点を当てます。
また、適切な補助具の使用と家庭や職場環境の調整が、日常生活の質の向上に寄与します。
機能回復への取り組み
急性期から慢性期への遷移期において、リハビリテーションは患者様の回復過程に大切な役割を果たします。
リハビリテーションにおけるポイントを説明します。
- 早期リハビリテーションの重要性:
- 早期介入:発症直後からリハビリテーションを開始することで、患者様の回復可能性を高めます。
- 複合的アプローチ: 理学療法、作業療法など、複数の専門分野からのアプローチが総合的なリハビリテーションとなります。
- 具体的なリハビリテーション手法:
- 運動療法: 一人ひとりに合ったリハビリプログラムにより、筋力、柔軟性、持久力の向上を目指します。
- 神経再教育: 損傷した神経の代わりとなる経路の強化と機能改善を促進するために、特定の動作やタスクの反復訓練を行います。
適切なリハビリテーション計画と患者様一人ひとりに合わせた治療の提供によって、最大限の機能回復を目指すことが、この遷移期においては重要です。
脳神経リハビリセンターで行っているリハビリの例をご紹介します。
関節可動域運動:
関節可動域を維持や改善するために、筋肉の柔軟性や位置を適切に修正し、適切な運動軸で動くように実施します。
筋力強化運動:
残存筋力を適切な収縮様式で強化していきます。
バランスと姿勢運動コントロール:
座位や立位で頭から足先まで協調しながら適切な筋活動を促しながらバランスを改善し、日常生活動作に反映するように姿勢と運動をコントロールする練習を行います。
脊髄損傷の展望【技術と研究の進展】
この章では、脊髄損傷に対する最新の研究進展と、未来の治療法の可能性について掘り下げます。
再生医療と脊髄損傷治療の可能性
再生医療技術は、脊髄損傷の患者にとって新たな希望かもしれません。
この技術により、損傷した脊髄の修復や機能回復が期待されています。
- 幹細胞治療が中心となり、損傷した神経組織の再生を目指すものです。
- 現在約150人が保険診療で治療を受けています。
これらの進捗はまだ初期段階であり、多くの課題が残されていますが、新たな治療法として注目されています。
革新的リハビリテーション技術の開発
リハビリテーション技術も進化しており、より効果的な機能回復を支援しています。
歩行ロボットによる歩行訓練が注目されています。
この技術により、リハビリの効果が大きく向上することが期待されます。
脊髄損傷研究の国際的な動向
国際的な研究連携が進み、脊髄損傷治療法の発展に寄与しています。
- 国際的なデータベースの共有により、より多くのデータが解析され、治療法の改善に役立っています。
- 国際的な臨床試験が多数行われ、新しい治療法の効果が検証されています。
これらの取り組みにより、世界中の研究者が知識を共有し、新しい治療法の開発を加速しています。
↓↓↓日常生活や社会復帰についての詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
脊髄損傷の原因・治療・リハビリ【日常生活・社会復帰を目指す方へ】
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
脊髄損傷の複雑さと、それに伴う身体的および生活への影響について理解を深めることができたでしょうか?
脊髄損傷は、レベルに応じて様々な症状があり、患者様ご自身だけでなく、ご家族にも多大な影響を与えます。
この記事では、脊髄損傷の症状、リハビリテーション、さらには再生医療や革新的技術の展望まで紹介しました。
脊髄損傷治療の未来は、研究と技術革新によって明るいものになるでしょう。
医療従事者、研究者、そしてコミュニティ全体が連携し、より多くの患者様が自立した生活を送れるよう支援することが大切です。
私たちとともに、希望に満ちた未来を掴みましょう。
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この記事を書いた人
山下 彰
理学療法士
2007年に理学療法士免許を取得し、その後、臨床神経生理学および神経科学分野での研究にて博士(医学)を取得。急性期・回復期・維持期・外来でのリハビリを経験。これまで主に脳血管疾患・整形外科疾患・神経難病の方のリハビリに携わり、主に経頭蓋磁気刺激(TMS)、誘発筋電図を用いた神経可塑性に関する論文および学会発表、様々な医療機関や講習会等での実技指導、養成校での非常勤講師などを行ない、臨床・研究・教育の3本柱で常に研鑽を続けている。現在の研究の焦点は効果的なリハビリを実現するための脳〜脊髄の運動学習メカニズムの解明に焦点を当てている。
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